岡山平和美術会 虫明英夫

公共文化施設の歴史

 昔から西洋では、文学は「図書館」、美術は「美術館(ギャラリー)」、演劇は「演劇ホール」、音楽は「音楽堂」あるいは「音楽ホール」というように、その都市を代表する専門の文化施設が建設され、市民の文化活動をバックアップし総合的な文化の発展を目指してきました。
 一方日本では、明治以前には、歌舞伎、能楽のための「芝居小屋」や「能楽堂」はありましたが、その他の分野では全く公共の施設は存在しませんでした。明治になってやっと東京、京都、大阪その他わずかな大都市に、前述のような施設が建設されてきましたが、地方都市では、多目的の公会堂が建設された程度でした。
 岡山市でも昭和20年以前は、県・市の図書館と池田家の寄附による公会堂だけでした。公会堂で、演説会から音楽会、演劇公演、時によっては美術展も開催されていたようです。

多目的ホールはある程度充実


 昭和30年代になってやっと全国的に、近代的な多目的ホールや美術館が建設されだしました。岡山市でも、全国でも早い時期に約1,700名収容の「岡山市民会館」が建設されたのに続き、「西大寺市民会館」「市民文化ホール」も設置されました。また平成3年には抜群の音響効果を誇る「岡山シンフォニーホール」も整備されるなど、多目的ホールはある程度充実した環境となっています。
 ところが、美術の分野では、オリエントの美術品を展示する「オリンエト美術館」や岡山県ゆかりの作品を展示する「県立美術館」

はあるものの、市民・県民の美術作品を展示することのできる公共の美術館は「県総合文化センター」しかありません。県内の市町村に大小39の公共の美術館が設置されているのに、どういうわけか岡山市には市民が展示のできる市立の美術館が無いのです。

市民が展示のできる美術館を


 岡山市として、市民の美術作品を展示できる市民のための美術館の整備が望まれるところです。そうした美術館で多くの市民の美術作品を展示していくのはもちろん、例えば、市内に点在するふれあいセンターや公民館とも連携して美術行事を企画するなどもできるでしょう。ついては、これまで以上に市民の文化活動も活発になり、岡山市の芸術文化の向上に大きく寄与できるのではないでしょうか。
 以上、思いつくままに書かせていただきましたが、「美術をもっと市民の日常生活の中へ」という新年のスローガンを、皆様方のお力添えで、より豊かに膨らませていただきますようお願い申し上げます。